2009年11月18日

クリヴェッリの「受胎告知」 ―シュテーデル美術館II

★「受胎告知」 カルロ・クリヴェッリ 1482年

受胎告知 カルロ・クリヴェッリ


cri_gab_up.jpg


cri_ma_up.jpg


2枚でひと組となっている。
シュテーデル美術館でクリヴェッリ作品に出くわすとは予想していなかったので、見つけたときには小躍りしたくなるほど喜んだ。
この作品を目にしたのは初めて。
トレヴィルのカルロ・クリヴェッリ画集には載っていない。

クリヴェッリの「受胎告知」といえばロンドンのナショナルギャラリーの作品を思い浮かべる方が殆どだと思われるが、この受胎告知はロンドンのものより4年ほど早く描かれたものだ。
クリヴェッリの偏執狂的細密さはこの作品ではあまり顕著ではないが(それでも細密であることには違いないけれど)、特徴的な人物の描写といい、だまし絵となっている静物の表現などは、やはりクリヴェッリらしい。
大天使ガブリエルの顔が一般的な女性的な表現ではなく、少々怖い感じすらする・・・
マリアは「いかにもクリヴェッリ」。
頭を傾けた仕草といい、しなやかな指といい、渦巻く長い髪といい、気品を湛えた美しさ。

窓から垂れた白い布や敷物、ガブリエルの衣の裾、マリアの足元の赤い布は、だまし絵効果を期待したもので、鑑賞者を受胎告知の世界へと誘なう。
ここに描かれた静物のだまし絵以外の隠された意味については、いまひとつよく分からない。
白い布の上に描かれているのは小鳥が入った鳥籠で、これはロンドンの作品にも描かれている。
籠の鳥は春の象徴となるので、おそらく これが春の日に起こった出来事であることを示しているのだろう。
マリアの前にある本は旧約聖書のイザヤ書。
「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産みその名をインマヌエル(注:「神は私たちと共に」の意)と呼ぶ。」
―「イザヤ書」 7:14

結構小さい絵だった・・・
うちにも飾れそうだな、などという大それた妄想を抱く。
この作品に吸い込まれたFuは、絵に近づきすぎてアラームを鳴らしてしまいましたとさ。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください!励みになります!
拍手!
blogram投票ボタン
posted by Fu Shusei | Comment(8) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年11月10日

みたび倒れても

イエス・キリスト


みたび倒れても
立ち上がる


―バンベルク 聖ミヒャエル修道院の裏手の道にて撮影

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください!
拍手!
blogram投票ボタン

最近ハマっているもの
・しょうが紅茶(生しょうがをおろすのはめんどくさいから、楽天で買った粉茶 あたたまります)
・よしながふみさんの漫画「きのう何食べた?」(読んでるとお腹が空いてきます)
posted by Fu Shusei | Comment(8) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年11月07日

バンベルクでオバケ返し

banberg_dom2.jpg

5か月振りに訪れたバンベルクは、今回もどんよりとした天気であった。
暗い色の厚い雲を背負ったバンベルク大聖堂は、今日も不機嫌そうな顔をしている。
大聖堂の重い扉に手を掛け中に入ると、外気温との差にぶるっと震えた。
外も十分寒かったのだが、中はさらに冷え冷えとしている。
私たちが真っ先に向かったのは、入口の少し先にある案内図だった。
例の場所を探す。
ええと、4番の場所は…

4) 司教の埋葬墓

司教の墓だったのか。
とはいえ、教会内の墓は特に珍しくもない。
ずいぶん古いもののように見えたが…どういった謂れの墓なんだろう。
何か資料がないだろうか、と右前方のインフォメーションに向かう。
「バンベルク大聖堂―信仰の宝」というカラーのパンフレットと「バンベルク大聖堂 ご案内」というコピーのリーフレットを手に取る。
係の女性に1ユーロを支払うと、彼女はパンフレットを開いて見どころを説明してくれた。
「この彫刻は外にあります。方向はこっち。それから…」
きさくな雰囲気のご婦人が細かく説明してくれたのだが、私の頭は司教の埋葬墓のことでいっぱいだった。
資料の中に詳しい解説がないだろうか。早く見たい。
彼女との会話を切り上げると、私はパンフレットとリーフレットから該当の場所を探した。
はたしてそれはリーフレットに載っていた。
司教の埋葬墓
埋まってしまっていたハインリッヒ二世の一番目の大聖堂の西クリプタ(納骨堂)が発掘捜査によって発掘された。新しく完成された埋葬墓は1996年に奉納。1997年にはその右側に司教区創区者の長であるハインリッヒとクニグンデのための記念碑が建てられた。
なるほど、あの場所は発掘された古い古いクリプタ(納骨堂)だったのだ。
あの雰囲気はそうだろう…と合点がいった。
相方の言っていたとおり、「カタコンベ」で間違いなかったということだ。

jyuujika_gunzo1.jpg

それにしても、この大聖堂では、なんとも落ち着かない気持ちになる。
居心地が悪い、としか表現できない。
たいへん美しい聖堂ではあるのだが、アシンメトリーで少し変わっている構造がそんな気分にさせるのか…
東クリプタは、上から丸見えだし!
寒気と背筋のゾクゾクが止まらない。
寒さのせいなのか、クリプタと知ったせいの気分的なものなのかは分からない。

「とにかく例の場所にもう一度降りてみよう。」
意を決して、西クリプタへの階段を二人で降りて行った。
一歩先が見えないほどの暗闇。
黴臭い匂い。
クリプタの奥と新しく作られた手前の墓だけが仄かな灯りでぼんやり照らされている。
「この間みたいに何か感じますか?」
「いや、特に何も。」
今度は、前回何も感じなかった私のほうが暗闇に怯えていた。
心のなかで死者への祈りを捧げると、私はそそくさと上に登った。
さて、オバケさんは無事クリプタに帰ってくれたのだろうか?

「あー、なんだか肩が重いわ。まだオバケが憑いてるのかも。」
大聖堂を出た後の相方の言葉にぎょっとする。
彼は私の反応を面白がって、からかっているのだ。
気分を取りなおして、外壁を見て回る。
自らの殉教具である石を手にした聖ステパノ(彼はキリスト教史上最初の殉教者で、激昂した民衆たちによって石打ち刑にされた)の像が微笑んでいる!

steven.jpg

殉教具を手にした聖人像で、これほどの満面の笑みを浮かべた像を私は他に知らない。
見れば見るほど不思議な微笑みであった。
なんだか私は、この大聖堂にもからかわれているような気分になったのだった。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください!
拍手!
blogram投票ボタン
タグ: 大聖堂 聖人
posted by Fu Shusei | Comment(15) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年10月25日

ネズミのダンス ―シュテーデル美術館I

バンベルクの話は書くのに時間がかかりそうなので、先にシュテーデル美術館で気に入った絵をご紹介します。
旅行記や写真ばかり続くと飽きそう…ということで、絵画紹介と交互にUPしていきます。



★「ネズミのダンス」 ネーデルラントの逸名画家  17世紀

der_tanz_der_ratten.jpg

ボッティチェリ、ベリーニ、クリヴェッリ、ファン・エイク、デューラー、レンブラント・・・名立たる画家たちの傑作が満載のシュテーデル美術館(in フランクフルト)で、一番気に入った作品がこれでした。
手(?)をつないでダンスするネズミたち。
か、かわいい・・・
(よく見ると、結構リアルで怖いけど・・・)
ネーデルラント版鳥獣戯画?
まさか絵葉書は売ってないだろうな〜と思っていましたが、ありました。
実はひそかな人気を集めている絵なのかも。
昔、私が勤めていた会社のビルはとても古くて、社員が帰るとネズミの運動会状態だったらしいのですが、こんなダンスもしていたのだろうか?

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください!
拍手!
blogram投票ボタン
タグ:絵画 美術
posted by Fu Shusei | Comment(10) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年10月19日

帰ってきております(遭難してません)

st_michael_ch.jpg

あちこち移動&全12公演鑑賞と、本当に忙しない旅でしたが、とても充実していました。
特にバレンボイム&ベルリン・フィルの瑞々しいショパンには胸を打たれ、クラシックとの幸福な出会いにあらためて感謝しました。
音楽鑑賞旅行に行き始めてから、通算100公演目ぐらいになるのかな?
こんなに心に染み入るようなコンサートは初めて。
ノリにノッた巨匠のアンコール演奏は全部で5回に及びました。

バンベルクのオバケ返し&ビール醸造所の話、フランクフルトのシュテーデル美術館(今回唯一行けた美術館)で観た絵画のことなど、たまの更新になると思いますが、少しずつ書いていきたいと思います。
オバケは増えてないハズです。。。たぶん。
例の場所の正体は、「ああやっぱり・・・」な場所でした。
次回書きます。
相方はずっと飲んだくれていて、とても幸せそうでした。
アムステルダムからベルリンへの車中(約6時間)ではずっと瓶ビールを飲み続けていて、車掌さんに「飲みすぎないでね。」と言われていました。
幕開けからして、これです・・・きっと今頃血液がビールとリンゴ酒に変わっているんじゃないでしょうか。

行く前は手配でバタバタ、旅行中もバタバタ、帰ってきてからもバタバタ、そして昨日・一昨日はバタッとシカバネに。
このまま11月に突入しそうな予感です。
まだ疲れも抜けぬ状態のまま、今夜はサントリーホールに行って、バンベルクで観てきたものとまったく同じプログラム(曲もソリストも指揮者も同じ)のバンベルク交響楽団のコンサートを観てきます(アホだ〜)

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください!
拍手!
blogram投票ボタン

写真はバンベルクの聖ミヒャエル教会からの眺めです。
右の像は、小さな子供の手をひいた守護の天使。
posted by Fu Shusei | Comment(9) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年09月29日

金曜日に

ber_pic.jpg


旅立ちます・・・が、まだ何の旅支度もしていません。。。

今回は北回りで。南回りはさすがにもう懲りました…_| ̄|○…
降機地のアムステルダムでロイヤル・コンセルトヘボウ管を聴いて一泊、翌日 鉄道でベルリンに移動。
ベルリン着が19時19分で、20時からベルリン・フィルのコンサートという無謀な計画であります。
毎日がこんな感じの、慌ただしいコンサート&オペラ行脚です。
2年前もこんな感じでしたが、その時はドイツ鉄道のストとも重なり、帰ってきて暫く寝込みました、ははは。

今回のメインエベントは、バンベルク響のブラームス・チクルス。
あとは声楽系が多いです。
声楽曲は「天地創造」に「カルミナ・ブラーナ」「ドイツ・レクイエム」、オペラは「ばらの騎士」、「皇帝ティートの慈悲」、「カルメン」。
オペラ 「カルメン」は、約3時間の立ち見です。

そうそう、この旅のいちばんの目的は、バンベルクにオバケを返しにいくことでした。
相方は、大量の燻製ビールを自分に流し込んで除霊(?)するよう模様^^;

行ってきます。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください♪ 旅行中も1日1ポチしていただけると嬉しいです。
拍手!
blogram投票ボタン

写真はベルリンの某教会の天井。
10月中旬に戻ります。
帰ってきたらガリ勉の日々が待ってる!

posted by Fu Shusei | Comment(15) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年09月27日

秋の日 ―Herbsttagという名のEinsamkeit

秋

「秋」 アーサー・ハッカー 1907年



主よ 秋です 夏は偉大でした
あなたの陰影(かげ)を日時計のうえにお置きください
そして平野に風をお放ち下さい

最後の果実にみちることを命じ  
彼等になお二日ばかり 南国の日ざしをお与え下さい
彼等をうながして円熟させ 最後の
甘い汁を重たい葡萄の房にお入れ下さい

いま 家のない者は もはや家を建てることはありません
いま 孤(ひと)りでいる者は 永く孤独にとどまるでしょう
夜も眠られず 書(ふみ)を読み 長い手紙を書くでしょう
そして並木道を あちらこちら
落着きもなくさまよっているでしょう 落葉が舞い散るときに

―ライナー・マリーア・リルケ 
「秋の日」 富士川英郎 訳


★★★

日中はまだ暑い日もありますが、夕方になるとぐっと気温が下がりますね。
何か羽織るものを持って出掛けないと、結構寒い思いをします。
今年は秋が来るのが少し早かったのでしょうか?
9月の初めから呼吸がちょっと辛くなり、ときおり小さな咳をしています。
喘息が出るのは、いつもはもうちょっと遅い時期のような気がするのですが。

私の命綱は、喘息の長期管理薬。
フルタイド(吸入ステロイド)+セレベント(長時間作動型吸入β2刺激薬)の2つから、アドエアひとつに変わり、管理が楽になりました。
それでも調子が良い時期は、ついうっかり吸入するのを忘れてしまいます。
秋になると息が苦しくなるので、自動的に吸い忘れがなくなる(笑)
私にとって秋といえば、息苦しさとリルケの詩の二つに尽きます。
苦しくても、いちばん好きな季節です。
寂しさと物哀しさと・・・そんな情感がいい。
孤独であることが特別でない、むしろ孤独であることが心地よく感じられる季節でもあるのです。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←応援してください♪1日1ポチしていただけると嬉しいです。
拍手!
blogram投票ボタン

WEB拍手へのメッセージありがとうございます(^−^)
ちゃんと読んでますよ! 
HerbsttagはAutumn day(秋の日)、EinsamkeitはLonelinessとかIsolation(孤独・孤立)。
アインザムカイト…ドイツ語のほうが重く、哀感のある響きをしているような気がする。
posted by Fu Shusei | Comment(8) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年09月22日

天使のいる回廊 天使巡礼 天使堂 @ 伊豆高原にお邪魔しました

天使堂のBlogはこちらデス。
やっと天使堂にお伺いすることが叶いました(約3年越し…)
伊豆高原は、空気がとてもおいしいところでした。

jyujika.jpg

十字架の形をした天窓…(うるわしい)

space1.jpg

このあたり丸ごと持って帰りたかった…(こらこら)

space2.jpg

ランプの灯火が回りを照らす…(うっとり)

space3.jpg

落ち着けるカフェスペース…(思わず長居してすみません 汗)

個人でこれほどのコレクション、正直びっくりしました。
天使堂Blogには未掲載の素敵なモノたちもあったりして…
天使や聖母マリアは勿論、現代作家の作品も多数所蔵されています。

★★★

カフェスペースから外を眺めていたら、相方が樹の上になにやら動く物体を見つけました。
「マングースだ!マングースがいます!」(←何故マングース…?)
マングースではなくて、大きなタイワンリスでした。
バードバスには、かわいい野鳥たちが水浴びにやってきます。
伊豆にお出かけの折には、ぜひぜひ天使堂へ(^−^)

天使堂の門番 追夢人さんは、詩的な空気を纏われた、とても優しい方でした。
天使堂の雰囲気にぴったりの方で、やっぱり門番さんなんだなぁ!と思ったのでした。
楽しいお話、そして 心がほわっと温かくなるようなお心遣い 本当にありがとうございました!

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←何か感じていただけましたか。応援してください♪
拍手!
blogram投票ボタン
タグ:美術 絵画
posted by Fu Shusei | Comment(4) | TrackBack(1) | 芸術的呟き

2009年09月19日

受容の微笑み

★「受胎告知」 カルロ・ドルチ 1653-1655年頃?

「受胎告知」 カルロ・ドルチ 1653-1655年頃?

「おめでとう、恵まれたかた」
大天使ガブリエルの驚くべき言葉。
少女は恐れ、戸惑ったが、大きな覚悟を持って、天使の言葉を受け入れる。
大いなる存在に全幅の信頼を寄せて。

「受容する」ということを考えるとき
そして、このドルチの聖母マリアを見るとき
私は、私の知っている一人の女性のことを思い浮かべる。

★★★

台湾南部の小さな町のはずれ。
玉眞さんがぼうぼうに伸びた草を掻き分けると、小さな十字架が彫られた墓が現れた。
「オトサン、オカサン、チビ ト チビ ノ コドモ ガ カエッテキタヨー。
オトサン ト オカサン ニ アイニキタヨー。」
玉眞さんの言葉を聞いて、母(チビ)と私(チビの子供)は、涙をこらえることができなくなった。
お墓の中で眠っているのは、「郭さんのおじさん」と「郭さんのおばさん」。
玉眞さんは、郭夫妻の息子のお嫁さんだ。
「郭さんのおばさん」が寿命を迎えて天国に旅立ったあと、ほどなくして「郭さんのおじさん」も天に召された。

郭夫妻は、小さな中庭のある家に住んでいた。
その中庭は、私の祖母、私の母、そして私のお気に入りの場所だった。
大通りに面している美容院の店舗を通り抜けると、中庭がある。
そして中庭を横切ったところにある急な勾配の階段を登ると、そこが郭夫妻の部屋だった。
「郭さんのおじさん」は日本留学中に、一人の未亡人に恋をした。
そして、彼女を台湾に連れ帰って、結婚したと聞いている。
彼女が「郭さんのおばさん」だ。

「郭さんのおばさん」は、小さくて細かった。
言葉数はとても少なかった。
そしていつも静かな微笑みを浮かべていた。
彼女の微笑みは、微笑みと呼んでもいいのかどうか迷うほど微妙な「微笑みが消えてしまう寸前」の表情なのだった。
小さな町のご近所で、同じく台湾に嫁いだ日本人である私の祖母にとって、「郭さんのおばさん」は本物の姉のような存在だった。
私の母にとっても、彼女は第二の母で、私にとっては第二の祖母だった。

彼女が纏っていた安寧な空気と、あの不思議な微笑みを思い出す。
ときおり、母はおばさんのことを話す。
「優しい人だったね。人の悪口を言うのも一切聞いたことなかったし。
他人の私たちを家族のように受け入れてくれた。だから私はいつもあの中庭で遊んでいたの。」
そして母は、郭夫妻の愛娘「しーちゃん」のことを話すのだ。
「しーちゃんが海で亡くなるなんてねぇ・・・。」
しーちゃんは、小学校の先生をしていた夫と一緒に遠足に行った。
遠足で行った海で高波に呑まれて、そのまま帰ってこなかった。
しーちゃんが亡くなったとき、母は家族とともに既に日本に移り住んでいたから、おばさんの悲しみの大きさを直接目にしたことはない。
私も母も、台湾に帰った折、おばさんから直接しーちゃんの話を聞いたことはなかった。

海お墓参りの帰り、玉眞さんは青い海を指してこう呟いた。
「アソコ ナミ ガ アライ。コドモ モ オトナ モ イナクナッタ。」
その言葉にはしーちゃんの名前は含まれていなかったけれど、きっと しーちゃんもその中の一人なのだろう。

いま思うのは、おばさんのあの不思議な微笑みは、悲しみを受容した微笑みだということだ。
すぐに消えてしまいそうな、口に入れたらすぐに溶けてしまうオブラートのように儚い微笑み。
あの微笑みから私たちが感じていたのは、何故だかわからないが、平安と安寧だった。
大きな愛と悲しみを小さな体に湛えていたひと。
おばさんが亡くなったあと、おじさんは食べ物が喉を通らなくなって、そのまま亡くなったらしい。
あんな女性が傍にいたのだもの。
その喪失感は、とてもとても大きなものだったのだ。

「郭さんのおばさん」は、私が言葉を交わしたことのある人の中で、いちばん聖母マリアに似ている人だった。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←何か感じていただけましたか。
拍手!
blogram投票ボタン

★★★

カルロ・ドルチの受胎告知は、上野のルーブル展に来ていました。
人ごみ恐怖症の私は、観に行けず・・・
やさしいブログ読者様が、そんな私に図録と絵葉書を買ってきてくださいました(涙)
この場を借りてもう一度、「ありがとうございます!」

写真はお墓参りの帰りに撮ったもの。

ところで、また ついったー始めました。
超おバカなつぶやきでよろしければ
http://twitter.com/shuseifu

posted by Fu Shusei | Comment(6) | TrackBack(0) | 芸術的呟き

2009年09月14日

青の溜息 ―フィリッポ・リッピの「聖母戴冠」

★「聖母戴冠」 フィリッポ・リッピ 1467-69年

santa_maria_assunta.jpg

イタリアに行った友人から、お土産に絵葉書をいただきました。
これはその中の1枚。
溜息が出るほどの美しさ。
特にこの天上の青の深さと聖母マリアの美しさといったら・・・。
これはフィリッポ・リッピの手によるもの。
細かな金細工といい、精妙な描線といい、色彩といい、丁寧な仕事ぶりです。
スポレートのドゥオモ(サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂)のフレスコ画だそうですが、友人によると、実物はこの絵葉書よりもずっとずっと美しい色彩だったそうです。
聖母の生涯を描いた一連の作品のクライマックス。
ドゥオモでの仕事は、フィリッポ・リッピの最後の仕事となりました。
未完成のうちに画家は天に召されたのです。
未完成の部分は、息子のフィリッピーノ・リッピによって補筆されました。
私もぜひ実物を見てみたいものだと思いました。
ドゥオモには、フィリッピーノが設計した父親のお墓があるそうです。

★★★

にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ ←何か感じていただけましたか。
拍手!
blogram投票ボタン

★★★

友人からは笑える絵葉書もいただきました。
ミケランジェロのダヴィデ像の大事なところのアップ写真に落書きがしてある(爆)
私が大喜びしたことは言うまでもありません。
さすが高校時代からのトモダチ…私のことをよくわかってるなぁ!
イタリア旅行は、一人旅のハラハラ・ドキドキと連日の暑さ(40度超え)と食べ物のしょっぱさ&脂っこさで大変だったみたい。
イタリアンにはしょっぱいイメージはなかったのですが、そういう地方もあるんですね。
posted by Fu Shusei | Comment(6) | TrackBack(0) | 芸術的呟き